生成AIと子ども Generative AI and children
- Yukako Bareil

- 10月13日
- 読了時間: 9分
この数十年のテクノロジーの進歩、通信技術の進歩は目覚ましいですね。
昭和世代としては、ポケベル(現代っ子には「?」でしょうか・・・)、携帯、PHS、スマホという通信機器の流れを実際に体験してきました。しかし、子どもも含め一人1台スマホやタブレット等を持ち、ネットにいつでも繋がることができ、そこでまたたくさんの繋がりが広がり続ける現在の姿は、全く想像できていませんでした。
さて、テクノロジーの進歩の中で、ここ最近の話題として生成AIがあります。
chat GPT、グーグルのGemini、マイクロソフトのCopilot、画像を作ってくれるCanvaなど、みなさんも使ったことがあるのではないでしょうか。
アメリカの心理学会誌では、ここ数年、AIの話題が継続してあがっています。今年に入ってからはその頻度がさらに高まっているように感じています。
日本でもニュースにあがりましたが、アメリカの高校生がchatGPTに相談をし、自ら命を絶ってしまったケースがいくつも発生し、問題となりました。今年の9月30日、chatGPTは保護者アカウントと子どものアカウントを紐づけることで、子どものストレスが高い状態等がみられたら保護者に通知が行くシステムを含めたペアレントコントロール機能をつけたことを公式発表しています。
さて、生成AIは若い世代にどのくらい広まっているのでしょうか。
日本では、公益財団法人博報堂教育財団の調査研究機関 こども研究所は、全国の小学4年生~中学3年生1,200人を対象に実施した、生成AIの利用実態に関する調査結果があります。2025年9月18日に発表されました。
詳細は下記のウェブサイトからご覧いただくことができます。
その中から、いくつかピックアップして下記に記します。
生成AIの認知度(知っている)は全体の79.3%で、使用率(使ったことがある)は小学生32.3%、中学生46.3%となっています。今後の使用意図は6割程度。半数以上が子供達が使ってみたい気持ちを持っていることがわかります。

欧米では、日本より一足早く生成AIが広まっているので、参考までに子どもの利用状況を見てみましょう。
イギリスのNational Literacy Trustによると、13歳から18歳の生成AI使用率は、2023年には37%でしたが、2024年には77%と飛躍的に伸びています。
また、英国情報通信庁の調査では、7歳から12歳のこどもでオンラインに繋がっている子のうち、40%が生成AIを利用しているとのことでした。
アメリカでは、2024年9月Common Sense Mediaによる調査によると13歳から18歳の10にに7人が生成AIを利用したことがあるとしており、さらに、Center for Democracy and Technologyによる2024年度の調査では、86%の学生が使用しているとしています。使用している生成AIとしては、AIサポートのある検索エンジンが56%、ChatGPTのようなチャットボットが51%でした。また、子どもたちは勉強のためだけでなく、暇な時にも生成AIを活用してアドバイスをもらっていることがわかっており、画像を生成したり、音楽を作ったり、話し相手として使っているという回答が得られています。
日本での子供達の利用の仕方はどうでしょうか。
先ほど紹介した調査で、使用経験があると回答した子達に、使い道を聞いた結果を見てみると、検索機能が小学生、中学生ともに一位です。

これを男女別に見てみると・・・
女子では絵やイラストといった趣味項目に加え、
「会話や雑談をする」26.6%、「悩み事や将来の相談をする」17.6%
という項目が男子よりも高い傾向がみられます。

思春期は、保護者と少し距離ができる時期です。
この時期は保護者には話さないけれど、友達とは共有する話題が生まれ、友達との親密度が高まる時期でもあります。
このプロセスは発達上自然の流れで、思春期の子どもたちは他者から見える自分を意識しながら、自分の自我、アイデンティティーを確立していきます。
会話や雑談、悩み事や将来の相談は、きっと友達同士でも話しているかもしれません。
でも、友達に言いにくかったり、誰に言ったら良いかわからない時、友達には連絡できない時間帯に、そうだAIを使ってみようと思うのかもしれません。
実際、学校のカウンセリング現場では、子ども達から生成AIの話題が出ることは少なくありません。chatGPTに聞いたらこう言われた、Copilotさんに相談したらこんなアドバイスをもらった。そんなふうに話してくれる子達が居ます。
大人が気づかない間に、子どもたちはどんどん活用し始めているのかもしれません。
実際、アメリカのCommon Sense Mediaの2024年の調査では、生成AIを使用していると回答した子達の保護者のうち、使用に気づいていたのは37%だけでした。
これから生成AIは益々広がり、学校の活動でも取り入れられていくことも予想されます。
経済協力開発機構(OECD)による国際教員指導環境調査(TALIS)の結果が、今年10月
7日に公表されました。2024年、16の国・地域が参加した調査で、日本は国公私立の校長と教員計7316人が答えました。その結果「過去1年間に授業などでAIを使ったか」という質問に「はい」と答えた割合は、日本は、小学校が16.0%(国際平均36.9%)、中学が17.4%(同36.3%)でした。また、日本は授業への生成AI導入のリスクを懸念する視点も
教職員の方々の中に強いという傾向が見られたそうです。
急速に広がる生成AI。
子ども向け仕様やセキュリティ対策の開発を待たずに、家庭でも使い方や注意点をよく知り、話し合っておいてはいかがでしょうか。
心理でわかってきていること
をここにいくつか記載しておきます。
まず、生成AIは確かに、使い方によって学習を高めることもしっかりわかっています。
その例としては、読み聞かせとそれに基づく質問という対話を生成AIに依頼すると、生成AIとの対話を通して子どもの文章理解がアップし、語彙が増えることがわかっています。
ただし、人間相手に同じことをした方が、子どもの参加姿勢は強まるということも同時に見えています。
生成AIを子どもが活用する際に1番の懸念事項として挙げられているのが、子どもの発達途上の脳への心理的、生理学的な影響です。

ある研究によると、3歳から8歳の子どもの調査では、チャットボットは人間ではないとわかりつつも、感情があるという認識をしているという結果が出ています。
幼児期には「アニミズム」という特徴があります。生命のないもの、おもちゃや家具や身の回りにあるものに意思や感情があると考えるのです。また、この時期は空想と現実の区別が曖昧の時期でもあります。ですから、自分の質問に人間のように回答してくれる、感情にも反応してくれる生成AIを擬人化し、現実のものと受け止めてしまいます。
一方、10代の子どもたちは、生成AIが人間でないということは理解しています。生成AIは、ユーザーが書いたことを全て肯定する形で会話をすすめます。そして、気持ちの言葉には共感して受け止めて、ユーザーをたくさん褒めてくれます。この部分から、ユーザーは徐々に生成AIに親しみを持ち、色々な話をしたくなります。こういった感情面でのつながりを感じる仕組みによって、10代の脳の中ではバーチャルのつながりと実際のつながりを区別することが難しくなっていきます。本来は人間との対話で育まれる社会性の部分に、生成AIとの対話も組み込まれてくるというのが、今の研究者たちの懸念事項としてあがっているのです。
生成AIとの会話が、現実の会話に影響をもたらす。そこで使う言葉を使うようになるというものから、さまざまな相談をしていくうちに心理的な依存をもたらすというものまで、社会性の発達や、倫理的なモデルとして生成AIが浮上してしまうのではないかというところまで、子どもへの影響がリスクとしてあがっています。

次に、生成AIはあくまでも収集した情報を提供しているわけですが、それを対話形式で、情報源を見せずに提示してくることで、全てが正しいと勘違いしてしまう子供達が出てくるという懸念があります。
これにも脳の発達が関係しています。さまざまな情報を客観的に評価して、判断するrational thinking という7歳から徐々に発達してくるとされる思考です。子供達はまだ
この部分が発達中なので、生成AIが提示してくれるものを疑うことなくしたがってしまいます。アメリカでは、暇つぶしに何かないかとアレクサに相談した10歳の子が、電気プラグに携帯電話の充電器を半分差し込んで、露出した金属部分に硬貨で触るように指示されたことがあり、問題になりました。これは動画サイトでペニー(硬貨の名前)チャレンジとされていた危険なチャレンジで、それを情報として提供していたようです。大人なら危ないと判断できる情報も、子どもは考えずにすぐ従ってしまう可能性があります。
さて、このように生成AIを全部信じるかどうかに関わる点として、
質問している内容について自分がある程度知っているか、
生成AIの特徴について知っているか
という点が影響していることがわかっています。
最後に、家庭でできるサポートについてお伝えしておきます。
まずは、生成AIに保護者も興味を持って、話をする、一緒に使うことです。
おこさんに「生成AI使ったことある?」と聞いてみてください。
中学生なら皆なんらかの生成AIを活用したことがあるのではないかと思います。
小学生でも、学校でやってみたという声があがるかもしれません。
一緒に使ってみて、お子さんがどんなふうに使い、生成AIの回答に反応しているかをみてみましょう。
そして、生成AIの情報は全て正しいわけではないこと、ユーザーのことを肯定してまた使ってもらうという仕組みがあることを、おこさんにわかりやすい言葉で説明してあげてください。
おこさんの使用に関する現状を把握して、使い方を確認した上で、生成AIの特徴、
気を付ける点を伝えることが大切です。
次に、客観的に情報をみて、自分で判断する力をつけていきましょう。例えば、質問の回答があっているかを自分で調べる、先生や専門の人に実際に聞いてみるなど、方法を一緒に考えながらサポートしてあげてください。海外ではファクトチェックができるサイトもいくつか存在しています。日本でもその動きが出てきているようです。ファクトチェックサイトを検索してみて、そこをみてみることもできます。
もうひとつ。お子さんがオンラインで作業したあとの様子を観察してあげてください。イライラいや落ち込みがないかどうか。考え込んでいる様子や、ぼーとしている様子がないかどうか。いつもと違う様子があったら、「何かあった?」と声をかけてあげてください。声をかけられるのを嫌がる子には、温かいココアをあげたり、何気ない会話から様子を確かめて話を聞いてあげてください。
最後に、生成AIだけでなく、今はさまざまなことでタブレットやPCに費やす時間が増えているお子さんが多いと思います。スクリーンタイムは何時まで。就寝は何時までなど、ご家庭でのルール決めも、ぜひ話し合いながら決めていきましょう。
生成AIはすごいスピードで進化しています。
また今後も新たな情報をブログで紹介していけたらと思います。








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