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ヒューマン&ヒューマン

更新日:9月17日

世界の果てまでイッテQで、カンヌ映画祭レッドカーペットでセレブとのショットをとりたい出川哲郎さんが、セレブに投げかけることば、「ヒューマンアンドヒューマン」。出川さんの独特の言い回しには思わず笑わってしまいますが、名言だなと思います。


きっと、「あなたはセレブ。私はあなたにとって知らない日本のタレント。でも、同じ人間じゃないか!」と訴える言葉かなと思います。女優のハル・ベリーさんが反応してわざわざ車から出てきてハグしてくれていました。それに対して出川さん「ヒューマンサンキュー」という、また思わず笑ってしまう素晴らしい御礼の言葉を送っていました。


さて、人間にはいつも社会的な役割がついてまわります。たとえば、私なら、母であり、妻であり、仕事をしている時はカウンセラー、友達と会うときは友人。娘でもあり、妹でもあり、同僚でもあり、コーチでもある。みなさんも、ご家庭で、仕事で、プライベートで、それぞれの役割どんなものがありますか?そして、それぞれで気を付けることはどんなことでしょう?自分のどんな面を強化して、どんな面は見せないようにしているでしょうか?


私が中学生の頃。いつもフレンドリーで雑談でも楽しませてくれる先生が、ある日、非常に機嫌悪く教室に入ってきました。一番前の席だった私と隣の子が、先生が入っても話を続けていると「授業始まってるぞ静かに!」と喝。教室がシーンとなりました。そこで止めれよかったものを、隣の子が「いつもと違うよね」「機嫌で左右されるなんて!」と憤慨してまた話してくるので、私も「そうだね」「確かにそうだ」と同調。それも静かな教室で響いてしまいました。。。授業後の礼のあと「そこの2人、あとで職員室来なさい」と先生が私たちをまっすぐみて言いました。やってしまった。。。職員室で怒られるなんて最悪だ。。。でも機嫌悪いからって大人ってひどい!そんなことをブーブーいいながら職員室に二人で向かいました。


「あ、こっちにきて」職員室に入ると、はじっこの席に座るように促され、そこで先生は腰掛けると、言いました。「先生も人間なんだ。ごめんなさい」へ?!拍子抜けしてその後の会話を覚えていません。怒られなくて済むという安堵と共に、「先生も人間」その言葉に衝撃を受け、先生が謝ってきたことで混乱しました。先生が、先生という肩書きを脱ぎ捨てて私たちに謝ってくれたということ。そうか、先生もひとりの人間かと、気づいてびっくりしました。


人は自分の役割に沿った形で行動しようとします。先生は先生らしく、生徒には色々と教える立場で。生徒は先生を敬って。これは役割の境界線としてとても大切で一定に保つことで安定した関係性や環境につながると思います。一方、それを盾に相手に意図せぬ影響を与えてしまった時には、それを乗り越えて話し合うことも大切なのではないでしょうか。


また、人は自分で「役割」と「それに沿った行動」を思い込んでやってしまうことがあります。すると世界が狭まってしまいます。


いつも元気に友達と遊ぶのに、クラスでの発言では緊張して小声になってしまう子がいました。間違えたくない、怒られたくない、いろんな思いが頭をよぎってしまうようです。先生がいいました。「周りを見てご覧。あなたは人間。この子も人間。あの子も人間。みんな人間。君はトイレいくだろう。あの子も行く、この子も行く、私も行く。みんな同じ。怖くないよ」この話を聞いた時は笑ってしまいましたが、これこそまさにヒューマンアンドヒューマン。役割、ここで見せる自分を鎧のようにまとってしまった子に、恐れないでいいよ、皆人間だからと伝えていたのだと思います。


自分のアイデンティティを形成する上で、社会的な役割は大きな影響を及ぼします。エリクソンの唱えた理論では、アイデンティティの確立に関する葛藤は13歳から22歳の間に行われるとされています。周りから見られる自分に意識が向き、徐々に社会でも自分に意識が向く時期です。現代ではSNSの発展から、「見られる自分」という概念はエリクソンの時代よりも早くに子どもたちに生まれているように思います。


Jennifer B Wallaceというジャーナリストが、「Never Enough」というアメリカでベストセラーになった著書の中で、成功を褒める文化、社会的なプレッシャーは保護者に伝播し、子どもの成功を願う保護者の行動に影響し、それがこどものメンタルヘルス悪化や自己喪失につながると書いています。


その予防のためにできることの一つが、子どもを、やっていること、がんばっていること、やり遂げたこと「以外」で認めること。つまり「ありのままのその子」を周りの大人、保護者や教職員が受け止めて認めることだと説いています。実際に自分のやっていることに意味を見出して充実している子の保護者にインタビューした結果、共通項としてあがったのが、子どもがやっていることの有無にかかわらず、ありのままを認め、受け入れているということだったそうです。



現代は、これまでになく見られる自分に意識が向きいやすい時代です。だからこそ、子どもに関わる大人は、目の前にいる子そのものを認めるという姿勢を意識することが求められているのだと思います。個性はさまざま。他の子や、その子の過去と比較するのではなく、今のその子を受け入れて認めて、一緒に歩む姿勢を見せられるよう、気をつけていきたいですね。


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