「這えば立て 立てば歩めの親心」という言葉をご存じですよね。
子どもの成長を一日でも早くあれと待ち望む親の気持ちを言い表しています。
わが子可愛さのあまり、的確な評価ができないのは世の常で、親バカと言います。
うちの子は○ヶ月なのに、もう這い這いしている。もう歩き出した。運動神経がいいので、スポーツ選手に向いているなどと話しているのは微笑ましい親バカですね。
ただ、よその子と比較して、自分の子どもが遅れていると焦るのは問題です。○才だからこれができて当たり前、どうして遅いの、何か障害があるの、育て方が悪いの、と悩んで落ち込むのは困りものです。ちょっと心配な親バカです。
古い話ですが、伊藤左千夫の『野菊の墓』、政夫の母は民子との間を引き裂きます。女が2才年上では世間体が悪い、わが息子にはもっといい嫁をとりたいと。しかし紆余曲折、民子が亡くなって、半狂乱になって後悔します。ひどい親バカだったと。いい母親だったのに。
また、うちの子は優秀だから、これはできて当たり前、もっとできるはずと考える親もいます。うまくできても不十分に思い、子どもを認めることなく、もっともっと上達や成長を要求するのです。これは頑張りすぎの親バカの気がします。
適切な課題や指導は望ましい成果を生み出すことも確かですが、その線引きが難しいところです。
私の友人で大病院の副院長をしている男は、父親を嫌っていました。学生時代からいつも優秀な同級生と較べられ「もっともっと」と成績が上がることを要求されたそうです。医者になり、努力して副院長になったときには、さすがに褒めてくれるかと思い報告しました。それなのに「S君は国立大学医学部学長になった。お前はそれだけか」と言われたそうです。彼の父親は社会的には立派な人ですが、本当の親心がわからない、未熟な親バカだと思います。
多かれ少なかれ親は子どもに対して親バカになります。
どうしても我が子をひいき目に見るし、心配しすぎてしまう。
それで、かばって甘やかしたり、厳しすぎて泣かし続けることもあるのです。
自分一人の視点だけでなく、周りの視点も取り入れながら子育てするのがいいでしょう。
いつも迷いながら、正しながら、悩みながら、でも楽しみながら、笑える親バカでいたいですね。
でも親バカって言葉嫌だな… 流行りの推(お)しで「推し親」(子を応援する親)、サポータ-に徹する「サポ親」がいいかな。
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