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大人の事情

昔、奥さんが亡くなって、男やもめで子育てに苦労していた友人が話してくれた。長女は高校に入って、父である私の分もお弁当を作ってくれるようになった。母さんの手作りと思っていたミニハンバーグ、クリームコロッケ、えびフライ、ミックスベジタブルなどの料理が全部冷凍食品だと分かったと。まあ、全部というわけではないだろうけど、大人の裏事情を知ってショックだったのね。今なら「時短」で褒められることだけど。


私の休みに合わせて、春休み前だけど、ディズニーランドに家族で行くことになった。小学4年生の息子に学校を休ませないといけない。遊びの旅行とは言いにくいので、お父さんの仕事の用事で行くと先生に言いなさいと言うと、息子は言えないと尻込み。口移しに丁寧に教えるができない。結局家内が担任に会って、正直に話して解決。ウソは物事を円滑に進める社会的スキルだと割り切る大人の事情に子どもの身がすくんだ話。その息子も長じて、ウソがバレると「マアマア、マアマア…」と言う。立派なスキルだ。


妻の料理はすべて美味しい。ウソではない。ただ裏事情はある。美味しいには10段階あって、8の美味しいもあれば5の美味しいもある。だからすべて無理なく「美味しい」と言える。自信無げに「美味しい?」と聞いてきたら、6の「美味しいよ」と言うし、自慢げに聞いてきたら10の「美味し~い!!」で答える。4以下のスコアなら、「合わない」「苦手」と評価を避ける。言葉は真実を伝えるものではなく、コミュニケーションの道具なのだ。


父は寡黙で頑固で、決定しか伝えなかった。だからウソなどつく必要もないと思っていた。晩年何度か手術や病気で入院した。家族が交替で付き添ったり、見舞いに行ったりした。私の当番の時には、いつも「大丈夫」「何もない」と言うだけ。しかし、母が父の要望を聞いて揃えて、それを私が届けに行く。「ありがとう」、それだけ。物足りなかった。でも今思うと、父なりの思いやりで、息子に手間をかけさせたくなかったのだと分かる。私も娘や息子にはできるだけ頼まないように遠慮して、家内には遠慮なく頼む。


親の事情というのもあることに気がついた。冒頭の友人の娘、子どももできた今、どんなお弁当を作っているのかな。母さんの何を引き継いだのかな…

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